ボタタナエラー 第17回公演
『くらイよるサ』
2022年8月3日(水)~7日(日)
会場:テルプシコール

作・演出:村田与志行

出演
関藤隆治 大間剛志
津田タカシゲ 平吹敦史
村田与志行 浅季愉女美
川崎桜 佐野恵海
辻󠄀川幸代(ニュアンサー)

スタッフ
舞台美術:泉真
照明:関塚千鶴(ライオン・パーマ)
音響:宮崎淳子
舞台監督:山本卓司
宣伝美術:高見綾(ayasui)
宣伝美術撮影:高橋敦(河内製作所)
舞台写真:あかさか くみ
記録映像撮影:市川敬太(劇団ステア)
当日運営:津田多民

ご挨拶

(だいぶ昔の話ですが)僕が小学生の頃、親に言われて学習塾に通っていた時期がありました。
やる気はなく嫌々通っていたので、授業中は参考書の下にコミックスを隠し、読んだりしていました。
ちょうどその当時、まだ二十代だった長渕剛が主演した「家族ゲーム」というテレビドラマがあり、
演じていたのは、大学七年生の家庭教師で、どこか無責任そうで飄々としていて、すぐに軽口を叩いたり、
女性をナンパしたりしていました。
長髪で痩せていて、チューインガムを噛みながら、街をふらふら漂うように歩くその姿に、
なんだか自由や楽しさを感じ、塾をさぼりたかった僕にとって、その家庭教師は憧れの存在でした。
いま改めて、僕が役者をやり始めた、そもそもの動機を考えてみると、
その中心にはそんな長渕の家庭教師がいたように思います。

けれどもそれから、実際に役者をやり始めてみて、本当に自由や楽しさを感じたことは、
正直あまり無かったのかもしれません。
芝居の現場では一般的に、作家と演出家は「良いテーマやセンスのある世界を創ること」、
役者は「その世界観を察知して、体現するため機能すること」といった方向で、
みんな鍛えに鍛えているようだったので、
僕も「役者とは、作品世界の中をいきいきと生きる存在」という風に捉え、芝居を続けてきましたが、
やはり枠に縛られる不自由さのようなものを、どこかで感じざるを得ませんでした。

長渕剛さんはその後、軟派なイメージを払拭していき、強い男になってしまいました。
でも僕は変わらずなるべく弱いままでいて、
「塾」から(大げさに、たとえば尾崎豊風に言えば、「支配」「束縛」から)逃れたかった、かつての僕が、
自由を感じ、憧れて楽しくなれるような芝居を創れたらと、模索をしたいと思います。