2005.1

 新春映画の一番人気は、やはりジブリということで、変わらずの支持率の高さですが、僕の周りの例えば芝居関係者間でも、熱狂的ファンは多数いまして、稽古場楽屋飲み屋の会話で、ナウシカちひろトトロにラピュタ、盛り上がることがままありますが、僕はフーンやらヘェーしか言えず、なぜならナウシカしか見てなかったからで、しかも内容ではなく安田成美が主題歌をたしか歌ってたということ位しか覚えておらず、それはおそらく流行のものとは距離をとりたい、僕の性質が原因でしょうが、一方会話に交じりたい自分もいまして、去年のツタヤ半額デーの日に、何作品か借り見たところ、その出来栄え等に感嘆しつつも、熱狂するまでは至らずで、心の琴線にもふれずでしたが、それは作品の責任ではなく、もしや見る能力が不足している、心の琴の質の悪さかと、自問し理由を考えまして、結果おそらく主人公の、ずるさ恨み嫉みの無い、清廉潔白な性格で、僕の場合それに反した、「どんな人間にも二面性がある」という、なにかの小説の解説文で読んだ文句が、心の琴に彫りこまれていて、そのため主人公に感情移入できなかったという、そういった次第のようでしたが、そもそも個人の二面性を描こうという、そんな作品群ではないわけですので、もうこれはこれ以上、なんとも言いようがありません。

 大ざっぱな分類ですが、表現は想像世界の夢に向かうか、現実世界のリアルに向かうか、二つの方向に別れるのではと思ってまして、僕の好みはリアルなものの気がしますが、しかし、リアルについて考察しますと、少々誇張した述べ様ですが、人間はどうしようもない存在で、他人を見下し蹴落としたりの、虚栄や暴虐めくるめく欲望、心の奥底の真っ暗な沼には、真っ黒な蛇やピラニアが棲み、さらに沼の上をすべるブラックアメンボ、そのまた上を跳ねる黒蛙など、なんかそんなのがウヨウヨしていて、それらを沼ごとドシャッ、グチャッとぶちまけて、どうだ参ったか!というようなのを目指したものも、夢や希望を謳う嘘っぽさと真逆だけれども同じく苦手で、僕の好みはリアルであるとも断言できず、これもまたもう、これ以上、なんとも言いようがありません。

 「何事も決めつけ断言するのは危険である」というのは、なにかの雑誌で誰かの言葉を誰かが引用していたものを、いま引用しているのですが、これも心の琴に刻まれてまして、要するにその中途半端さが心地よく、それでこそ書ける名文というのが可能であれば、書いてみたいかもしれないわけで、しかし今まさにこの文面のように、曖昧すぎてもイライラしますし、ですからこれも、もうこれ以上、なんとも言いようがありません。