2005.7 |
改めて言うのもなんですが、僕は「村田」と申しまして、特に珍しい苗字ではありませんけれども、さらにまた改めて世間を見回せば、様々な苗字の方がいらっしゃいまして、先日立ち読みした学習マンガ『名前の謎とひみつ』のよれば、我が国の苗字の数は世界一らしく、約三十万位あるそうで、よそでは多い国でも三万位さっ、どうだいっとマンガ上のモノシリ博士も愉快そうであり、また「村田」というのは田んぼに人が群がって出来た集落という意の地名から来てるそうですが、まあ所詮そんな事は実生活には役立たない雑学以上のものではない訳でして、しかし対象年令が自分より二回り近く下の、そんなマンガを読んでしまったのは、現在次回公演の台本を書き始める段階にいるからで、タイトル名が決まった今、次は人物の役名であり、名前というのはテキトーに付けても付けられますが、出来れば素敵な名付け親になりたい、まず名前自体だけでハッタリをカマしたい等の欲も働き、それよりも芝居の内容の構想を早く練るべきと思いつつも、頑張るべき事を目前にすると気がそぞろになるという僕の性質も手伝って、名前自体の、名前だらけの世界という様な所に、気持ちを取られてしまいました。 実は以前、名前に囲まれて過ごしたとも言える様な日々がありまして、それは住宅地図の調査というアルバイトをしていた時ですが、持主が新しく変わった家などをチェックする仕事なので、当然数多くのお宅の表札を目にします。業務的に様々な苗字情報を処理していく中で、一風変わったお名前にも出合いまして、いくつか例を挙げますと、まずは強そうなお名前から、鉄砲塚さん帯刀さん、飲食系では飛柿さん牛腸さん酒匂さん、セクシー系の薄衣さん、その他テレビで討論?朝生さん知識さん、また、浮気さんという方もいらっしゃいました。そしてさらにここで、目にした瞬間に動揺し、コント芝居のごとく二度見してしまったという様な、印象深い表札ベストスリーを挙げさせて頂きます。 さて名前について、さらなる考察を致しますと、例えば前出の鉄砲塚さんが強い方だとは限らないし、また酒匂さんはひょっとしたら下戸かもしれないという様に、名前自体とその人自体にはズレがあり、その辺は役名を付ける際にも考慮すべき点でありまして、さらに言えば役の人物が喋る言葉、つまり台詞を考える際においても、人は自分の思ってる事をそのままストレートにいつも話す訳じゃないし、逆に思ってる事をそのまま相手に話そうとしても、うまく伝わらなかったり伝えきれなかったりする訳ですから、ここにも言葉と人間の、考慮すべきズレがあり、先程の宇宙的視点の住所を引き合いにすれば、具体的な地番、町名、区名、県名、国名とさかのぼって行くと、ハッキリとらえられない無限の宇宙へとつながると言えまして、そのように人間の言葉というのも、発せられたその源をたどって行けば、無限の創造力空想力をもつ心、言わば人間の小宇宙へとつながるのであると言えるのです。 「宇宙」という言葉が出てきてしまい、神秘的な雰囲気に酔ってしまった様な所にこのエッセイが陥ってしまいました。書き直したい気持ちは山々ですが台本の事がありまして、早く人物名を決め、その先に進みたいと思いますので、言葉を扱う表現をナメてはいけないと新たに自覚した「新・村田」ですが、今回はこのままで、締め括らせて頂きます。 |