■ご挨拶
むかし僕の実家のわりと近所に、ヤクザ関係のエラい方のお宅がありました。そのお宅のそばに公園があったのですが、その園内で、夏の暑い日にもろ肌脱いで、入れ墨あらわにしたお兄さん達が、楽しげにキャッチボールしてるのを、小学校からの帰り道などに見掛けた事があります。たぶん若い衆の方だったのでしょう。公園にはほかに犬を散歩させてるおばあさんや、タバコ吸ってるおじいさんなども普通にいたので、お兄さん達は別に公園を占拠していた訳ではなく、また周りを威嚇するために、入れ墨を見せていた訳でもなく、ただ暑いから上着を脱いで、ヒマつぶしにキャッチボールをしているといった様子でした。「入れ墨のお兄さんが公園でキャッチボール」というのは、僕の子供時代の、町の風景のヒトコマだったと言えるのです。しかしながら最近ニュースで、僕の故郷の市において、暴力団排斥運動が盛んになっている事を知りまして、あの夏の風景が、何だかもうすっかりと、過去のものになったように感じました。キャッチボールに興じていた、あのモンモンしょったアンちゃん達は、いったい今どこにいて、何をされているのでしょうか……
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